特許の国内優先権制度を活用すべきタイミングと注意点

特許の国内優先権制度を活用すべきタイミングと注意点

国内優先権制度とは国内優先権制度とは
国内優先権制度とは、特許を申請する際に、最初に行った国内の特許出願(先願)を基に、その出願日を優先日として他の特許出願に対する優先権を主張することができる制度です。この制度を利用することで、最初の特許出願から一定期間(日本では一年以内)以内に行われた同一発明に対する後願出願の優先日を、先願出願日にすることができます。つまり、この期間内であれば、他の人が同じ発明で特許を出願しても、最初に出願した人(先願者)が優先されるという意味です。


優先権の適応イメージ

  • 2023年1月1日

    ベンチャー企業の経営者が自社のビジネスモデルについて特許出願を行います。これが「最初の出願日」となります。

  • 2023年6月1日

    ある競合企業が同様のビジネスモデルについて特許出願を行います。

  • 2023年12月31日

    あなたが再度、改良したビジネスモデルについて特許出願を行います。

この場合、ベンチャー企業の経営者が行った最初の出願日(2023年1月1日)が優先されます。つまり、競合企業が2023年6月1日に出願した特許は、あなたの最初の出願と一致する部分については無効となります。このため、あなたの特許権は確保され、競合からの脅威を排除することができます。これが国内優先権制度の働き方です。

優先権を主張しない場合のリスク

もしもあなたが特許出願を行った後、国内優先権を主張しないで1年を過ぎてしまった場合、その優先権は失効します。これは、その1年間に他者から同じ発明について特許出願がなされた場合、その特許出願が先になり、あなたの発明の特許権が侵害されるリスクがあります。このような状況は特に、競争の激しいビジネス環境では大きな問題となり得ます。

具体例を挙げて説明しましょう。あなたが2023年1月1日に特許出願を行いました。そして、何らかの理由で優先権を主張せず、1年を経過させてしまったとします。その間に、競合企業が2023年6月1日に同様のビジネスモデルについて特許出願を行った場合、あなたが先に出願したにも関わらず、その競合企業の出願が先になります。結果として、あなたのビジネスモデルについての特許権を失う可能性があります。

注意点

このため、特許出願後は一年以内に必ず再出願を行い、国内優先権を有効に活用することが重要です。これにより、自社の重要なビジネスモデルを確実に保護し、競争優位を維持することができます。

国内優先権を主張すべき具体的な事例

以下に国内優先権を活用すべき具体的な事例を挙げます。

  • 事例1:商品の改良や追加機能の開発

    あなたが開発したビジネスモデルについて初めて特許を出願したとします。しかし、その後、そのビジネスモデルに改良点や新たな機能を追加した場合、その改良や新機能も特許で保護することを考えるでしょう。

    このような場合、最初の出願日から1年以内であれば、国内優先権を利用して新たに改良や新機能について特許を出願することができます。その際、優先権を主張することで最初の出願日が優先され、改良や新機能も確実に保護することが可能になります。
  • 事例2:競争相手が近似の技術を出願

    もし競争相手があなたが出願した技術に近い技術を特許出願した場合、その技術があなたの技術とどの程度重なるかは細かな内容や解釈次第となる可能性があります。そのため、あなたが先に出願した技術についてさらに詳細に特許を出願することで、より強固な保護を得ることが可能です。

    この場合も、最初の出願日から1年以内であれば、国内優先権を利用して特許を出願することができます。その際、優先権を主張することで最初の出願日が優先され、競争相手からの脅威をより確実に防ぐことができます。

以上のようなシチュエーションでは、国内優先権を活用して特許保護を確実にすることが強く推奨されます。

機能追加と優先権の関係

機能追加を行った場合に優先権を主張するかどうかは、その追加機能が元の特許出願とどれだけ関連しているか、また追加機能が特許出願の範囲をどの程度広げるかによります。

追加機能が元の特許と密接に関連している場合 追加機能が元の特許と別の新規性を持つ場合
もし追加機能が元の特許出願と密接に関連しており、元の発明の自然な延長と見なせる場合、その追加機能について新たに特許出願を行う際に、元の特許出願の日付(最初の出願日)を優先権として主張することが考えられます。これにより、追加機能についても早い段階で特許保護を得ることが可能となります。 一方、追加機能が元の特許とは異なる新規性を持ち、それ自体が新たな発明と見なせる場合は、その追加機能について独立した新たな特許出願を行うことが適切かもしれません。この場合、新たな出願日が設定され、優先権の主張は必ずしも必要ではありません。

しかし、どのアプローチを選択するべきかは個々の状況や発明の具体的な内容によるため、最終的な判断は専門的な知識を持つ特許弁理士に相談することを強く推奨します。

競争相手が類似特許を出願し、優先権主張期限を過ぎた場合の対抗策

もし優先権主張期限を過ぎてしまった場合、その対策はなかなか難しいものになります。しかし、以下にいくつかの可能性を示します。

異議申立て

異議申立て

まず、競争相手が出願した特許が公表された後、その特許があなたの発明と重複する、あるいはあなたの発明を逆引きしている場合は、異議申立てを行うことが可能です。これにより、競争相手の特許が無効になる可能性があります。

訴訟を起こす

訴訟を起こす

また、特許権侵害の訴訟を起こすことも考えられます。これは、あなたが先に発明を公開し、その後競争相手がそれをパクったと主張するものです。しかし、このような訴訟は証拠が明確であることが必要であり、また時間とコストがかかることを理解しておく必要があります。

新たな特許出願

新たな特許出願

最後に、あなたの発明に何らかの改良や追加機能を加えて新たな特許出願を行うことも可能です。この場合、新たな出願日となりますが、改良や追加機能については特許保護を得ることができます。

いずれの方法も、専門的な知識を持つ特許弁理士に相談することが重要です。具体的な戦略は個々の状況、競争相手の特許内容、あなたのビジネス戦略などにより異なります。

審査事情を熟知した成功率の上がる出願

知財コンサル・相談無料!

サービス詳細をみる

中小企業・スタートアップ向けYoutubeチャンネル