実用新案権の保護対象と保護期間は?特許との違いを具体例で解説

実用新案権の保護対象と保護期間は?特許との違いを具体例で解説

はじめに

技術分野において、新しい発明やアイデアを保護するために特許と実用新案という制度があります。この二つの制度は、異なる種類の発明を保護するために使用されます。本稿では、特許と実用新案の違いについて詳細に説明していきます。

特許の基礎知識

特許は、発明者に特定の期間内で独占的な利用権を与える制度です。特許権者は、発明に関する商業利用を制御し、他者による無断利用を禁止することができます。特許は、発明に関する文書を特許庁に提出することによって取得することができます。

発明には、新規性、進歩性、産業上の利用可能性が求められます。新規性は、すでに知られている技術や知識に基づかない独自のアイデアであることを示します。進歩性は、発明が技術の進歩に寄与する可能性があることを示します。産業上の利用可能性は、発明が実用的であることを示します。

特許庁は、発明に関する申請書を審査し、特許が付与されるかどうかを決定します。特許が付与されると、発明者は一定期間内で、他者による商業利用を禁止することができます。

実用新案は特許よりも保護期間が短い

実用新案は、特許と同様に、発明者に一定期間内で独占的な利用権を与える制度です。実用新案は、特許と比べてより簡単に取得でき、申請手続きや審査期間も短いです。ただし、実用新案は、発明に対する要件が特許よりも緩やかであり、保護期間も短いことが特徴です。

実用新案は、申請書によって取得することができます。申請書は、発明の名称、発明の概要、発明の図面などを含みます。特許庁は、申請書を審査し、実用新案登録を決定します。実用新案は、登録後10年間有効であり、その期間中は、他者による商業利用を制限することができます。

特許と実用新案の違い

特許と実用新案の最も大きな違いは、発明に対する要件です。特許は、新規性、進歩性、産業上の利用可能性の高い発明を保護するための制度であり、審査期間も長く、取得には多くの労力が必要です。一方、実用新案は、ある程度の改良や修正によって得られたものを対象とし、保護期間も短いことが特徴です。

また、特許と実用新案の保護範囲にも違いがあります。特許は、発明の全体に対して保護されます。つまり、特許権者は、他者がその発明の全てまたは一部を使用することを制限することができます。一方、実用新案は、改良点や修正点に対してのみ保護されます。つまり、実用新案権者は、他者がその改良点や修正点を使用することを制限することができますが、既存の技術全体に対する独占的な利用権を得ることはできません。

また、特許は、審査期間や申請手続きが長いため、発明の技術革新を遅らせる可能性があります。一方、実用新案は、審査期間が短く、申請手続きも簡単であるため、技術革新を促進する役割を果たすことができます。

特許と実用新案の実例3選

スマートフォンの画面操作方法の特許

スマートフォンの画面操作方法の特許

スマートフォンの画面操作方法は、複数の指でのタップやスワイプなどの操作を含みます。この画面操作方法は、Apple社が開発したiPhoneの特許として知られており、他社が同じような操作方法を使用する場合は、Apple社の特許侵害となります。

食器洗い機のノズルの実用新案

食器洗い機のノズルの実用新案

食器洗い機のノズルは、水を噴射して食器を洗浄するための重要な部品です。ある発明者は、ノズルを多角形状にすることで、洗浄効率を高める実用新案を申請しました。この発明により、食器洗い機の洗浄効率が向上し、より効率的に食器を洗浄することができるようになりました。

医薬品の製造方法の特許

医薬品の製造方法の特許

医薬品の製造方法は、非常に複雑であり、厳密な手順に従う必要があります。ある発明者は、特定の医薬品の製造方法において、従来の製造方法とは異なる工程を導入することで、製造効率を向上させる特許を申請しました。この発明により、医薬品の製造プロセスがより効率的になり、医療分野に貢献することができました。


特許や実用新案の申請手続き

特許や実用新案を申請する際には、以下のような手続きが必要となります。

  • STEP 1

    申請書の作成
    特許庁や実用新案庁の指定する申請書を作成します。申請書には、発明の名称や概要、発明の利点や特徴、図面などが含まれます。

  • STEP 2

    審査請求の提出
    特許や実用新案を申請する場合、審査請求を提出します。これにより、特許庁または実用新案庁が申請された発明が既存の知識や技術から独立しているかどうかを調査し、特許や実用新案の付与の可否を決定します。

  • STEP 3

    審査の進行
    特許や実用新案の申請が受理されると、審査が始まります。特許庁や実用新案庁の審査官が、申請書に記載された発明について調査や検証を行い、付与の可否を決定します。この審査には、数年かかる場合があります。

  • STEP 4

    特許や実用新案の付与
    審査が完了し、特許や実用新案が付与されると、発明者は特許権や実用新案権を取得します。この権利を持つことで、発明者は自身の発明を独占的に利用することができます。また、他者が同様の発明を使用する場合は、特許侵害や実用新案侵害になるため、発明者は法的に保護されます。


特許や実用新案の活用方法

特許や実用新案は、発明者にとって重要な知的財産権となります。これらの権利を活用することで、発明者は自身の発明を独占的に利用することができるだけでなく、他者からのライセンス料や製品の販売利益を得ることができます。

以下に、特許や実用新案を活用する方法をいくつか紹介します。

ライセンス契約の締結特許や実用新案を持つ発明者は、他社にライセンス契約を締結することで、自身の発明を使用してもらうことができます。ライセンス契約には、ライセンス料や使用期間、使用範囲などが規定されます。
製品の販売特許や実用新案を持つ発明者は、自身の発明を活用して製品を開発し、販売することができます。この場合、他者からのライセンス料や販売利益を得ることができます。
特許侵害や実用新案侵害の防止特許侵害や実用新案権を持つ発明者は、他者による特許侵害や実用新案侵害から自身を守ることができます。特許侵害や実用新案侵害が発生した場合、発明者は法的手段を取ることができます。
特許権や実用新案権の主張特許侵害や実用新案侵害が発生した場合、特許権や実用新案権の主張をすることができます。これにより、発明者は裁判所での争いに勝利し、侵害行為を停止させることができます。
損害賠償の請求特許侵害や実用新案侵害が発生した場合、発明者は損害賠償の請求をすることができます。この場合、発明者は裁判所で損害額の証明をする必要があります。
仮処分の申請特許侵害や実用新案侵害が発生した場合、発明者は仮処分の申請をすることができます。仮処分とは、裁判所が争いの解決を待つ間、一時的な処置を命じることです。これにより、発明者は裁判の結果を待たずに侵害行為を停止させることができます。

特許や実用新案の問題点

特許や実用新案は、発明者にとって重要な知的財産権ですが、以下のような問題点も存在します。

審査の遅延
特許や実用新案の申請には、審査が必要です。しかし、審査には数年かかる場合があります。このため、発明者は自身の発明を実際に利用する前に、数年間待たなければならないことがあります。

特許や実用新案の権利の制限
特許や実用新案の権利には、使用範囲が限定される場合があります。また、特許権や実用新案権は、期間が限定されているため、その期間が終了すると権利が消滅してしまいます。このため、発明者は権利を守るために継続的に監視し、更新手続きを行う必要があります。

特許や実用新案の争いのコスト
特許や実用新案に関する争いは、裁判所での争いになることが多く、コストが非常に高くなることがあります。特に、国際的な特許や実用新案の争いの場合は、複数の国で訴訟を起こす必要があるため、コストが高くなります。

特許や実用新案の保護範囲の曖昧さ
特許や実用新案の保護範囲は、特許庁によって審査されますが、保護範囲が曖昧な場合があります。これは、裁判所が発明の保護範囲を解釈することになるため、争いの原因となります。

特許や実用新案の濫用
特許や実用新案の権利を持つ者が、自身の権利を濫用することがあります。たとえば、特許や実用新案を取得した後に、競合他社に対して不当な特許侵害や実用新案侵害の主張をすることがあります。

まとめ

特許と実用新案は、発明者にとって重要な知的財産権であり、他者による侵害から自身を守るために有効な手段です。しかし、審査の遅延や権利の制限、争いのコスト、保護範囲の曖昧さ、権利の濫用など、問題点も存在します。発明者は、これらの問題点に対処しながら、自身の発明を守るために特許や実用新案の取得を検討することが重要です。また、特許や実用新案の取得にあたっては、弁理士などの専門家に相談することをおすすめします。

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