国内商標の分割出願におけるメリット・デメリット

国内商標の分割出願におけるメリット・デメリット

商標の分割出願と通常の出願の違い

商標の分割出願と通常の出願の違いについて説明します。分割出願は一つの商標出願に含まれる複数の商品・役務(クラス)について、出願を分けて進める手続きを指します。通常の出願では、全ての商品・役務が審査を通過しなければ商標登録が得られないところ、分割出願を用いると一部の商品・役務だけでも先に登録を得ることが可能となります。

商標の分割出願と通常の出願の違い
通常の出願における問題点

全てのクラスに対する審査通過が必須

全てのクラスに対する審査通過が必須

通常の商標出願では、その出願が複数のクラスを含む場合、全てのクラスにおいて審査が通らなければ、その出願は商標登録となりません。このため、1つでも問題があるクラスがあると、全体の登録が遅れたり、最悪の場合は登録されない場合もあります。

分割出願のメリット

分割出願のメリット

一方、分割出願を利用すると、出願中の商標が複数のクラスにまたがる場合でも、審査に時間がかかるクラスや問題が生じているクラスを分割して取り扱うことができます。これにより、問題のないクラスについては早期に商標登録を取得することが可能となります。

参考例

例えば、あるベンチャー企業が新たに提供するサービスの商標を出願するとき、そのサービスが「ソフトウェア」(クラス9)と「教育サービス」(クラス41)の2つのクラスにまたがるとします。その商標出願に対して、「ソフトウェア」に関しては既に他の事業者が似たような商標を登録しており、商標法第3条第1項第6号に該当する恐れがあるため審査に時間がかかりそうです。しかし、「教育サービス」に関しては特に問題はなく、早く登録したいと考えています。

この場合、通常の出願のままでは「ソフトウェア」の審査が終わるまで「教育サービス」の登録も待たなければならないため、時間がかかります。しかし、分割出願を行えば、「教育サービス」については先に登録を取得でき、早期に商標権を活用することが可能になります。

要するに、商標の分割出願は、早期に商標登録を取得し、知的財産権を活用するための重要な戦略となります。

分割出願のメリットとデメリット

  • メリット

    分割出願の最大のメリットは、出願中の商標が複数のクラスにまたがる場合でも、問題のないクラスについて早期に商標登録を取得することが可能になることです。これにより、特定のクラスでの審査に時間がかかる場合や問題が生じた場合でも、その影響を他のクラスに及ぼすことなく、スムーズに商標登録を進めることができます。

  • デメリット

    一方、分割出願のデメリットは、出願の手続きが複数回必要となり、その結果、手数料が増えて全体の出願費用が高くなる可能性があることです。また、商標の権利範囲が複数の登録に分散するため、管理が複雑になるという問題もあります。

    このようなデメリットを考慮しても、商標登録を早期に取得することのメリットが大きいと判断するなら、分割出願は有用な手段と言えるでしょう。

分割出願と通常の出願、どちらを選ぶべきか

  • 分割出願を選ぶべきシチュエーション

    一つの商標に複数のクラスを含む出願を検討している場合、それぞれのクラスで審査の進行度合いや結果が異なることが予想されるとき、分割出願が有用です。

    特に、一部のクラスに対する権利取得を急ぐ必要がある場合や、一部のクラスで予想される審査の難易度が高い場合には、分割出願により効率的に権利を獲得できるでしょう。

    早期に確実な権利を獲得することが最優先と考えられるケースでは分割出願を検討する価値があります。

  • 通常の出願を選ぶべきシチュエーション

    出願に含まれる複数のクラス全てで審査結果が同時期に出ることが予想され、また、全てのクラスにおいて一定の確信度を持って出願することができる場合は、通常の出願が適しています。通常の出願は分割出願と比べて出願手続きや対応の手間が少なく、費用を抑えることができる利点があります。

    また、一度に全てのクラスについての権利を取得することができるため、戦略的に有利な場合もあります。

商標登録の審査において拒絶理由が提示された場合、商標の分割出願は重要な戦略の一つとなり得ます。審査が通過しやすいクラスと通過しづらいクラスが同一出願内に存在する場合、拒絶理由がある商品・サービス(クラス)を分割することで、問題のないクラスについては早期に商標登録を取得することが可能になります。

具体的な手順

分割出願を利用して拒絶理由がある商品・サービス(クラス)を分割します。これにより、オリジナルの出願については拒絶理由のある商品・サービスが取り除かれ、審査が進行しやすくなります。

分割した出願については、拒絶理由を解消するための対応(例えば、補正、意見陳述、審査請求等)を行います。

ただし、分割出願を行う前には、それぞれの出願に対する費用や手間、また分割出願による商標戦略全体への影響等を総合的に考慮することが重要です。必要に応じて、弁理士や専門家に相談することをお勧めします。

商標の分割出願は非常に有用な手段ですが、以下のような点に注意する必要があります。

追加の出願料 分割出願は新たな出願とみなされ、そのたびに出願料が発生します。出願を分割することで追加のコストが発生するため、その費用と利益を慎重に比較検討する必要があります。
分割出願のタイミング 商標法では、原出願が審査中の間、または審査結果に対する不服申立て期間中であればいつでも分割出願を行うことができます。しかし、そのタイミングによっては、分割出願が審査結果に影響を及ぼす可能性があります。適切なタイミングを見極めることが重要です。
保護範囲の変動 分割出願によって、商標の保護範囲が変動する可能性があります。商標の使用範囲や市場戦略に対する影響を事前に検討することが必要です。

審査事情を熟知した成功率の上がる出願

知財コンサル・相談無料!

サービス詳細をみる

中小企業・スタートアップ向けYoutubeチャンネル