Newsletter 2022年11月号

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ご挨拶
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暦のうえでは立冬となり、めっきり日が暮れるのが早くなりました。早いもので、今年も残すところあと2か月です。

さて、この度、弊所はニュースレターの定期発行を再開することと致しました。知的財産に関わる様々なトピックスを毎月皆様にお届け致します。

時事ニュースや身近な話題をご紹介することで、知財を身近に感じて頂けるよう努めてまいりますので、何卒ご愛読の程宜しくお願い申し上げます。

トイレットペーパーの特許侵害訴訟

日本製紙クレシアと大王製紙の争いが再び始まりました。日本製紙クレシアは大王製紙が販売する「エリエール i:na(イーナ)トイレットティシュー 3.2 倍巻 ダブル」等が、日本製紙クレシアの特許権を侵害するとして製造販売の差止めと3300万円の損害賠償を求めて、2022年9月6日に東京地裁に提訴しました。日本製紙クレシアは、「紙の柔らかさを保ちながら直径を抑える加工技術」など、3件の特許技術が侵害されたとしています。※ 訴状の具体的な内容や対象の特許権等は現時点ではわかりませんが、日本製紙クレシアが権利を持つ「紙の柔らかさを保ちながら直径を抑える」トイレットペーパーの製造方法の権利範囲に大王製紙の製品が入るかが争点になります。

トイレットペーパーはどれでも大概同じ大きさですが、これはトイレットペーパーの芯のサイズがJIS規格で定められているからです。そのため、大きさを変えずに紙を長尺化することで、従来と同じ長さであっても置き場所をとらないという利点があります。また、輸送の面でも、従来品よりも1度に多く運べる点で、輸送時の二酸化炭素の排出量も抑えらます。※

日本製紙クレシアの提訴に対し、大王製紙は、当該自社製品に侵害の理由はないものとし、裁判で自社の正当性を主張していくと応訴の姿勢をみせました。大王製紙は、自社のホームページ上で、「当社は長巻タイプのトイレットペーパーとして、1997 年に「エリエールトイレットティシューコンパ クト 8R(1.5 倍巻)」を、2014 年には「エリエール i:na(イーナ)トイレットティシュー2 倍巻」を 発売し、お客さまから交換や購入の手間が減らせるということで大変ご好評をいただいております。また、 長巻タイプの商品は輸送効率が良く、CO2 の削減につながるなど SDGsへ貢献する商品として、これまで普及に尽力してまいりました。」と主張しています。

大王製紙はかつて、ティッシュの特許で日本製紙クレシアを訴えて敗訴をしたことがあります。この裁判で大王製紙は、日本製紙クレシアが販売するティッシュペーパー「クリネックス アクアヴェール」について、大王製紙が所有する特許権を侵害するとして、東京地裁に提訴しました。東京地裁(一審)、知財高裁(控訴審)でも日本製紙クレシア側の主張が認められています。(平成27年(ネ)第10016号事件)ティッシュの裁判に続き、今回も両社にとっての主力製品であるため、負けられない争いとなります。

(※日経新聞電子版:2022年9月6日)

椎名林檎さんのグッズが
「ヘルプマーク」「赤十字マーク」と酷似
デザイン変更へ

歌手の椎名林檎さんのCDアルバムの特典グッズが、東京都が商標権者になっている「ヘルプマーク」と酷似していることを受けて、販売元のユニバーサルミュージック合同会社は、自社のウェブサイト上で、デザイン変更、および11月30日に予定していたアルバムの発売日を変更すると発表しました。今回の件について東京都は、同社に対して確認と対応依頼を行っていました。同社のホームページでは、日本赤十字社、東京都福祉保健局から各マークの使用規定などについて指導があった旨を伝えています。

  • 変更前のデザイン
    ※現在は販売元のHPから画像削除

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    変更後のデザイン
    画像元:UNIVERSAL MUSIC JAPAN

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    商標権者:東京都
    商標登録:第5624913号
    登録日:平成25年10月25日(2013.10.25)
    区分並びに指定商品:第20類
    要支援者表示プレート(金属製のものを除く。)、ネームプレート及び標札(金属製のものを除く。)、アドバルーン、木製又はプラスチック製の立て看板

<変更前のグッズの問題点>
赤色のカードケースは、東京都が商標登録をしている写真右と非常によく似ています。東京都は20類で商標登録をしており、指定商品も表示プレート等であるため、カードケース(18類に該当)とは、商品非類似にあたり、椎名さんのグッズが直ちに商標侵害に問われることはないと思われます。また、ノベルティグッズは、商標法上の商品に当たらないという判例があります。

商標法上では、侵害とならなくとも、東京都によると、「ヘルプマーク」は、周囲の人に配慮を必要としていることを知らせ、援助を得やすくすることを目的に作成され、2012年10月頃から使用されています。まだ知名度が高くない中、影響力のあるメディアで大々的に椎名さんのグッズが報道されてしまうと、本当に援助を必要としている方との区別がつかず、混乱が生じてしまう恐れがあります。
 
写真左上のマスクケースについては、赤十字のマークに似ているという指摘もあります。「赤十字マークと類似」する場合は、商標法でいえば登録が拒絶されるべき商標であり(商標法第4条1項4号)、赤十字の標章に関する規制法(赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律)では、「赤十字の標章又はこれに類似する記章はみだりにこれを用いてはならない」と規定されているので(同法第1条)、そもそも個人が、赤十字標章を商業的に使用することはあまり望ましくないものと思います。また、1条に「違反した者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」に処する旨の規定もあります。(同法第4条)

つきなみですが、グッズの作成前に、商標調査と社内での検討を十分にすべきであったと思います。特に赤十字のマークは、世界規模で著名であり、使用が禁止されているものであるので、少なくともこれに類似するマークであることは認識すべきであり、配慮が必要でした。

販売元のユニバーサルミュージックは、「法令の確認を含めた各種チェックが不十分であったこと、また、日本赤十字社及び東京都福祉保健局からも各マークの使用規定などについてご指導を頂きましたことなどを踏まえ、このたびの決定に至りました。」「ヘルプマークをご利用の皆様、その普及に努められている皆様には、ご不安・ご不快な思いを抱かせてしまいましたことを心よりお詫び申し上げます。」と謝罪文を掲載しています。

改正情報(特許庁HPより抜粋)
特許外国弁護士による
法律事務の取扱いに関する
特別措置法の一部を改正する
法律の施行に伴う
関係省令の整備等に関する
省令について

① 様式改正 
外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律が改正され、2022年11月1日より、弁護士及び外国法事務弁護士を社員とする弁護士・外国法事務弁護士共同法人(以下「B法人」という。)について、弁護士法人と同様に法律事務(特許庁に対する手続代理を含む。)を行うことができるように省令が整備されました。

B法人が特許庁代理を行う場合、従来の手続書類では、実際に業務を執行した者が、特許庁代理に係る業務を執行する権限のある国内弁護士の社員なのか否かを確認することができず、本来権限のない外国法事務弁護士が、B法人という形式を利用して、特許庁代理に係る業務を執行することを捕捉できない恐れがありました。そのため、外国法事務弁護士が特許庁代理をすることができない手続の各様式の備考において、B法人内の担当弁護士を、手続書類から確認可能とするよう、B法人が代理人として手続をする場合には、当該手続に係る業務を執行する社員を記載を必須とする旨を規定しました。

② 委任状の写しの提出の許容
代理権を証明する書面のうち委任状については、原本ではなく、その写しの提出が許容されるようになりました。

③ 審判手続の証拠の写し等の光ディスクによる提出
これまで証拠の写し等は、書面でしか提出でききず、証拠書類のコピーや取りまとめなど手続き者にとって負担となっていましたが、書面に代えて光ディスクによる提出が可能となりました。

2022年9月26日(月)公布 2022年11月1日(火) 施行
②は公布日より施行

特許情報フェア&コンファレンスに
出展します

「第31回 2022 特許・情報フェア&コンファレンス」に出展します。

特許情報フェアは、知的財産関連の日本最大の専門見本市です。知財分野に役立つ最新の製品の展示や講演等が行われ、弊所もブースを出しておりますので、是非、足を運んで頂けると幸いです。

開催日時 2022年11月9日(水)-11日(金)10:00-17:00
会場 科学技術館 東京・北の丸公園
主催 一般社団法人 発明推進協会、一般財団法人 日本特許情報機構、産経新聞社
入場料 無料(登録制)

詳細は、下記のウェブサイトをご参照ください。
https://pifc.jp/2022/


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