Newsletter 2023年3月号

Newsletter 2023年3月号PDFで見る

ご挨拶
- message -

やわらかい春の日差しが心地よい頃合いとなってまいりました。桜の花を目にすると、新しい季節の訪れを感じます。弊所も新しい気持ちで新年度を迎えたいと思います。

さて、今月号のニュースレターのトピックですが、「期間徒過後の救済規定に係る回復要件の緩和」、「原出願が審判係属中の分割出願に対する審査中止の運用」「WIPOが2022年の国際出願の統計を公表」「TwitterとFacebook開設のお知らせ」についてになります。

期間徒過後の救済規定に係る回復要件の緩和
改正の概要
特許法や意匠法、商標法のそれぞれの法律において、所定の手続きを行わなければならない期間は厳密に規定されており、それらの法律で定められた期間内に手続きをすることが出来なかった(期間を徒過した)場合、特許庁に対して回復請求を行い、回復が認められる(救済される)ことで、期間経過後であっても手続きを行うことができます。

これまでは、期間内に手続きを行うことが出来なかった理由として「正当な理由」があることが回復に必要な要件でしたが、この「正当な理由」は非常に厳格であり、単なる人為的ミス等は認められないため、回復請求を行っても認められないケースが多数を占めていました。

しかし、令和5年4月1日付でその一部が施行される、特許法等の一部を改正する法律(令和3年法律第42号)により、期間徒過後の救済規定に係る回復要件が「正当な理由があること」から「故意によるものでないこと」に緩和されることになりました。

「故意ではない」基準の対象となる手続き
対象となる手続きは、これまで回復要件に「正当な理由」が必要であった手続きと同一であるため、非常に多岐にわたりますが、主だったものとして、特許法においては翻訳文の提出(特許法第36条の2、第184条の4)、国内優先権及びパリ条約による優先権の主張(特許法第41条、第43条の2)、審査請求(特許法第48条の3)、特許料の納付及び割増登録料の追納(特許法第112条の2)等が対象となります。また、意匠法及び商標法においても同様に、更新登録の申請や登録料の納付及び割増登録料の追納(意匠法第44条の2、商標法第21条、商標法第41条の3)等が対象となります。

「故意ではない」の基準
個々のケースについては現段階では判断できませんが、人為的ミスやシステムトラブル等、期間を徒過したことが故意によるものでない(意図的ではない)場合は、救済される可能性が高いと思われます。

しかし、出願人等が手続きをしないと判断して所定の期間を徒過した後、期間徒過後に状況の変化などを理由に救済手続をすることとした場合(例えば、期間徒過後の社内の方針転換や、金銭的事情による経営判断等)は、手続きをすることができなかった理由が「故意によるものである」と判断され、救済が認められない可能性があります。

「正当な理由」の基準
なお、令和5年3月31日以前に手続期間を徒過した案件については、従前どおり「正当な理由があること」が回復要件となります。「正当な理由」は非常に厳格かつ細密であるため、詳細は「期間徒過後の救済規定に係るガイドライン」をご参照ください。

回復手続きの流れ
所定の手続期間内に手続きをすることができなかったことが「故意によるものでない」ときは、期間徒過後の手続きができるようになった日から2月以内で、かつ手続期間の経過後1年以内(商標に関しては6月以内)に、所定の期間内に行うことができなかった手続きをするとともに、手続きをすることができなかった理由を記載した回復理由書を提出する必要があります。回復理由書については、「(1)所定の期間内に手続きをすることができなかった理由及び手続きをすることができるようになった日」を簡明に記載し、併せて「(2)手続きをしなかったことが故意によるものでない」ことを表明する必要があります。なお、今回の改正から回復理由書の提出と共に、回復手数料の納付も必要になります。

その後、特許庁が期間や手数料等の方式的要件を含めた回復の判断をし、回復が認められれば手続きが受理されることになります。

回復手続きの流れ
特許庁ホームページより

優先期間を徒過したPCT国際出願の優先権の回復(「故意ではない」基準)について
なお、令和5年4月1日以降に優先権主張の基礎となる出願の日から12月を徒過したPCT国際出願についても、優先権の回復請求を受理官庁である日本国特許庁に提出する場合の優先権の回復制度の要件が、「相当な注意」基準から「故意ではない」基準に緩和されます。

こちらも「故意ではない」基準や回復手続きの流れは、上記の他の回復要件の緩和と概ね同じとなります。しかし、「故意ではない」基準を採用している受理官庁としての日本国特許庁が回復を認めた優先権は、PCT規則49の3.1の規定を留保しておらず、かつ、国内法令が「故意ではない」基準又は出願人にとってそれより有利な基準を採用している指定国において、原則その効力を有するものの、「故意ではない」基準で受理官庁としての日本国特許庁が回復を認めた優先権は、「相当な注意」基準を採用している指定官庁(例えば、欧州特許庁)に対しては効力を有しないことにご注意ください。そのため、「相当な注意」基準で回復を認めることを希望する場合は、例えば「故意ではない」基準及び「相当な注意」基準の両方の基準を採用している国際事務局に国際出願を行い、回復を認められることで、「相当な注意」基準を採用している指定官庁に対しても効力を有することになります。

原出願が審判係属中の分割出願に対する審査中止の運用
運用の概要
分割出願を行うことができる期間は、願書に添付した明細書等について補正をすることができる時又は期間内にするとき(特許法第44条第1項第1号)、特許査定の謄本の送達があった日から30日以内(拒絶査定不服審判又は前置審査によって特許査定となったものを除く)(同項第2号) 、最初の拒絶査定の謄本の送達があった日から3月以内(同項第3号)、となりますが、第1号に記載された時又は期間には、原出願の拒絶査定後、拒絶査定不服審判請求と同時にする時が含まれます。その時に分割出願を行った場合、分割出願の審査は、基本的には原出願の拒絶査定不服審判と並行して進められることになります。

しかし、そのような出願の中には、原出願の前置審査又は審判の結果を踏まえて分割出願の審査をする方が、審査が円滑に進む場合があります。また、出願人にとっても、原出願の拒絶査定不服審判の結果を踏まえて分割出願の補正を行ったり、あるいは原出願が特許審決又は前置特許査定によって権利化された場合、分割出願を権利化せずに取り下げる等、分割出願の対応を種々検討できることは、より効率的かつ効果的な出願戦略の構築につながると期待されます。

以上のような事情を鑑み、原出願が審判に係属している時に、所定の手続きを行うことにより、分割出願の審査を原出願の前置審査における特許査定や拒絶査定不服審判の審決等が送達されるまで中止とする運用が開始されることになりました。

運用の概要
特許庁ホームページより

対象となる出願
対象となる出願は、令和5年4月1日以降に審査請求がされた審査着手前の出願であって、(1)原出願の拒絶査定後に分割された分割出願であり、(2)原出願について拒絶査定不服審判請求がされており、原出願が前置審査又は拒絶査定不服審判に係属中であって、(3)原出願の前置審査又は審判の結果を待つことが便宜である、特許出願です。なお、(3) の要件は、請求項に具体的な発明特定事項が記載されていないことが明らかである(例えば「明細書に記載の発明」のみ記載されている)場合は要件を満たしませんが、その他の場合は原則として要件を満たします。

運用の流れ
本運用の適用を申請する場合、出願人又は代理人は、対象となる分割出願の審査請求日から起算して5開庁日以内に、対象となる分割出願について、特許法第54条第1項の適用について事情を説明する旨の(1)上申書の提出、(2)専用フォームからの送信、の両方の手続を行うことが必要となります。

上記の申請に基づき、当該分割出願が本運用の適用対象となるか否かを判断した後、判断結果がメールで通知されるとともに応対記録が作成されます。本運用の適用対象となった場合、原出願において以下の(1)前置審査における特許査定の謄本が送達、(2)拒絶査定不服審判における最初の審決の謄本の送達、(3)審判請求の取下や又は却下、のいずれかがなされてから3か月後まで、当該分割出願の審査が中止されます。

審査中止の期間が終了する場合、その旨がメールで通知されるとともに応対記録が作成され、審査中止の終了後は、上記(1)~(3)のいずれかの契機から起算して通常の出願と同様の審査順番待ち期間を経て、当該分割出願が審査に着手されます。

WIPOが2022年の国際出願の統計を公表
世界知的所有権機関(WIPO)が2022年の国際出願の統計を公表しました。

2022年のPCT国際特許出願の件数は、前年の+0.3%と微増でした。大きな増加が目立ったのはインドで、前年の+25.4%、韓国も+6.2%の増加となりました。国別出願件数では、1位が中国、2位米国、日本は、前年の+0.14%で3位という結果でした。

出願人別のランキングでは、1位から順に、ファーウェイ(中国)、サムスン電子(韓国)、クアルコム(米国)、三菱電機(日本)、エリクソン(スウェーデン)でした。トップ50のうち、日本企業は、15社入り、そのうち上位5社は、前述の三菱電機に次ぎ、NTT(7位)、パナソニック(10位)、ソニー(12位)、NEC(14位)となっています。三菱電機は、日本企業で8年連続の1位獲得となりました。また、NTTが、前年の+24.9%で、前年の12位から初めてトップ10に入りました。

技術分野では、コンピュータ技術が10.4%、次いで、デジタル通信(9.4%)、電気機械(7.1%)、医療技術(7%)、計測(4.6%)と続きました。

マドプロ国際商標出願は、前年より-6.1%の減少となりました。1位は米国、2位がドイツ、3位が中国でした。日本は、前年より-2.6%の減少で7位でした。

出願人別のランキングでは、1位から順に、ロレアル(フランス)、ノバルティスAG(スイス)、グラクソグループ(英国)、ユーロゲームテクノロジー(ブルガリア)、現代自動車(韓国)となりました。日本企業で最多となったのは、資生堂で7位でした。トップ50のうち、日本企業は、わずか4社で、任天堂(10位)、ミズノ(24位)、バンダイ(48位)が入りました。

最も指定されたクラスは、コンピューターハードウェア・ソフトウェア、その他の電気または電気機器で、11.3%を占めています。次いで、ビジネスサービス(8.8%)、科学技術サービスに関するクラス(8.5%)と続きました。

ハーグ国際意匠出願は、2022年に中国がハーグ協定に加盟したことで、前年比+11.4%と急増しました。中国は、2,558件の出願をして、2位となっています。1位はドイツ、3位はイタリアでした。日本は前年+2.4%で10位でした。出願人別のランキングでは、1位から順に、P&G(米国)、フィリップス(オランダ)、サムスン電子(韓国)、Wenko-Wenslaar(ドイツ)、I. Paleohorinos(ギリシャ)となりました。日本企業の最上位は、32位のビッグウエスト、42位に三菱電機で、トップ50のうち、僅か2社でした。

意匠の分野では、記録および通信機器(10.4%)、輸送手段(9.7%)、パッケージとコンテナ(7.0%)、家具(6.8%)、液体分配機器、衛生、暖房、換気など(6%)の順になりました。

  • <PCT国際特許出願>WIPOが2022年の国際出願の統計を公表
  • <マドプロ国際商標出願>WIPOが2022年の国際出願の統計を公表
  • <ハーグ国際意匠出願>WIPOが2022年の国際出願の統計を公表

引用元:
https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2023/article_0002.html
https://www.wipo.int/export/sites/www/pressroom/en/documents/pr-2023-899-annexes.pdf


TwitterとFacebook開設のお知らせ

この度、「坂本国際特許商標事務所」のTwitterとFacebookを開設致しました。
知財や弊所に関する情報をタイムリーに発信していきますので、是非フォローをよろしくお願い致します。

Menu