Newsletter 2023年1月号

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ご挨拶
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寒さも一段と厳しくなってまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
平素は、格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。

本年も、知的財産の付加価値をより一層高めるため、所員一同、一丸となって取り組んでまいります。 坂本国際特許商標事務所をどうぞ宜しくお願い致します。

欧州:単一特許(UP)と統一特許裁判所(UPC)が間もなくスタート

長らく議論された欧州単一特許(UP: Unitary Patent)と統一特許裁判所(UPC: unified Patent Court)がいよいよ2023年6月1日に発効します。EPOへの「特許付与決定の遅延申請」は2023年1月1日以降5月31日まで可能であり、UPCからの「オプトアウト」手続は3月1日以降、可能です。

現加盟国1.現加盟国

現加盟国は、右図に示す17ヶ国(含ドイツ)です。アイルランド等が加入予定です。EPC及びEUの両方の締約国のうち、スペイン、ポーランド、クロアチアは現時点で不参加を表明しています。

2.UPについて

出願から特許付与と異議申立はEPCに基づきます。特許付与から1ヶ月以内に、UPを選択することで、UP特許を取得することができます。将来的には機械翻訳が提供されるために、特許明細書の翻訳文の提出は不要になりますが、移行期間(UP発効日から6年間又は延長されれば最大12年間)は、UPの選択後、EPC言語の他の言語(例えば、ドイツ語又はフランス語)による特許明細書の翻訳文の提出が必要です。

UP特許は、UPを選択した際のUP加盟国のすべてをカバーする単一の特許であり、4ヶ国の年金相当の年金が必要です。UPCでUP特許が無効とされた場合、UP特許全体が無効になります。

EP各国の特許を取る手段は、(1)各国に出願する、(2)EP出願をして各国に移行する、(3)EP出願をしてUPを選択するの3通りとなります。なお、(3)の場合、UPでカバーされない国(英国、スイス等)には(2)の通り、各国に移行することが必要です。

EP出願の特許付与が近く、UP特許を望む出願人は、EPOへの「特許付与決定の遅延申請」をすることができます。その申請は2023年1月1日以降5月31日まで可能です。

3.UPCについて

UPCが扱う特許は、「UP」、「SPC(医薬品/農薬の延⻑関係)」、「現存⼜は将来のEP特許」です。

UPCの構造

UPCが取り扱う訴訟は以下の通りです。

<地方部と地域部>侵害訴訟(+無効の主張) 、仮差止申立て、先使用権訴訟<中央部>無効確認訴訟、非侵害確認訴訟<控訴裁判所>第1審の控訴

訴訟言語は、「中央部」ではEP出願の言語です。「地方部と地域部」では、原則、その国の公用語ですが、例外として、その国が認めればEPC言語の1つ、両当事者の合意でEPC言語の1つ、及び一方当事者の申請で裁判所所長の判断でEPC言語の1つが認められ、多くの地方部と地域部では英語を訴訟言語とされるようです。「控訴裁判所」では第1審の言語です。

EP特許についての訴訟管轄は、移行期間(UPC発効日から7年間又は延長されれば最大14年間)の間、UPCと各国裁判所のいずれでも訴訟可能です。ただし、 UPCからの「オプトアウト」した場合は、各国裁判所のみが管轄します。移行期間後に出願されたEP特許はUPCのみが管轄します。

UPCからの「オプトアウト」手続は、UPC発効前、2023年3月1日以降、可能です。オプトアウトの効果は、移行期間後も継続します。オプトアウト後、その撤回(オプトイン)が可能ですが、オプトイン後、再度のオプトインは認められません。

他人の氏名を含む商標、登録緩和へ

「他人の氏名若しくは名称」を含む商標についての登録が緩和されます。現行の制度では、商標法第4条1項8号のもと、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」については、商標登録ができないことになっています。自らの承諾なしに、その氏名等を商標に使われることがないよう人格的利益を保護するためのものです。

しかしながら、氏名を含む商標は実際に多数存在しており、同号の規定が厳格化されたのは、比較的近年のことで、個人情報や氏名に係る人格的利益が重要視されるようになった時代背景に沿ったものだと思われます。過去には登録されていても、同一出願人が別出願を行った際に拒絶査定を受ける事案が相次いでいます。特に、近年の審査、審決では、登録を求める氏名の周知・著名性、出願商標の周知・著名性等の条文にない要件を考慮することなく、拒絶査定がなされています。

他人の氏名を含む商標、登録緩和へ<参考:「他人の氏名を含む商標の登録要件緩和」産業構造審議会知的財産分科会 第9回商標制度小委員会> 令和4年9月29日

現行制度では、 出願人の商標登録を受ける利益より、他人の氏名に係る人格的利益が過度に優先されているという問題が生じていました。ファッション業界を中心に、デザイナーの氏名を含む商標登録のニーズが高く、出願人の商標登録を受ける利益と他人の氏名に係る人格的利益との調整方法の見直しが必要であると議論がなされてきました。

制度の見直しのきっかけとなったのは、「マツモトキヨシ」の音商標に関する拒絶査定不服審判請求事件です。(知財高判 2021年8月30日(令和2年(行ケ)第 10126 号)) 本事件では、「マツモトキヨシ」という氏名が含まれていても商標登録が認められ、知財高裁は特許庁の審決を覆しました。「「マツモトキヨシ」という言語的要素からなる音から,通常,容易に連想,想起するのは,ドラッグストアの店名としての「マツモトキヨシ」,企業名としての株式会社マツモトキヨシ,原告又は原告のグループ会社であって,普通は,「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」,「松本潔」,「松本清司」等の人の氏名を連想,想起するものと認められないから,当該音は一般に人の氏名を指し示すものとして認識されるものとはいえない。」との判断によるものです。
  
この判決以後、1年以上にわたり意見交換がなされ、昨年11月22日に行われた産業構造審議会の商標制度小委員会にて、改正に向けた意見がまとまりました。今後は、「氏名」に「一定の知名度」の要件を課すこと、「出願人の事情(例えば、出願することに正当な理由があるか等)」を考慮する要件を課す方向で規定の見直しがされます。

現行制度が見直されれば、自己の名前でのブランド戦略が可能となり、産業の活発に繋がるのではないでしょうか。

木村 一弘弁理士加入のお知らせ

2023年1月6日より、木村 一弘弁理士を副所長に迎えました。

木村一弘弁理士は、新潟大学法学部法学科を卒業後、盛岡地方裁判所に入所して、経済産業省東北経済産業局にて中小企業対策などを担当しました。
その後、経済産業省通商政策局、中小企業庁を経て特許庁に勤務しました。
特許庁においては、商標審査、商標審査基準や商標制度の企画立案作業に従事し、審判部37部門長を最後に退官した後、国内特許事務所に勤務しました。

木村 一弘弁理士 <経歴>
盛岡地方裁判所
経済産業省東北経済産業局
経済産業省通商政策局通商協定管理課(TRIPS協定担当)
特許庁審査業務部商標審査官(雑貨繊維担当)
特許庁商標課商標審査基準室長(新商標の審査基準作成)
特許庁審査業務部上席審査長(産業役務担当)
特許庁審査部第37部門 部門長審判長


<学歴>
新潟大学法学部法学科卒業
一橋大学大学院国際企業戦略研究科法務・公共政策専攻修士課程修了(修士経営法)
フランクリン・ピアース・ローセンターLLM修了(現:ニューハンプシャー大学ロースクール)

 
木村弁理士を迎えたことを契機に、これまで以上に充実したサービスを皆様にご提供できるよう、事務所一同努めてまいります。


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